学校の校門近くにいる守衛さんに挨拶し、いつも一番なので鍵をもらって3号館の地下の版画工房の部屋を開ける。
汚れた白衣に着替えて、大きな作業机を拭いてから、今日の制作にかかる。
版画の刷りが午前中にあると、お昼時間にはすでに大疲れしている。
毎日食堂で違う顔ぶれとお昼ご飯を食べる、話す。
いろいろな人(特にアートに携わっている人たち)の悩みや人生を垣間みる。
腕組み王女が経験した悩みだったりしたらアドヴァイスをする。
食堂の売店のおばさんと毎回ちょっとだけ話しをして、親しみを込めて110円の水ボトルを買う。
そして工房に戻って自分の作品に向かう。
ほとんどの作業は思ったようにはうまくいかなくて、ぶつぶつ愚痴る。
たまに版画の先生がお顔を出して下さると、チョットした指摘が突破口になったりする。
一喜一憂しながら夕方5時過ぎになり、立ちっぱなしの作業から開放される。
誰か一緒に駅に向かう人がいたら知らない人でも「一緒に帰りましょう」と声をかける。
だって駅まで15分はあって、一人で疲れ果てて黙々と重たいリュックで歩くのはいやだから、誰かと話しながら帰りたい。
そうして何科の学生かは知らないが新たな友だちになる。
帰りの電車がよく遅れたり乗り遅れたりして、古河まで昨日などは4回乗り換えて帰って来た。
たまの休みは展覧会まわりでその関係の人たちと一緒だったり、お茶したりまたは一人でいくつもの会場を回る。
帰りには電車賃がもったいなので、何かしらの買い物を東京でしてから戻るから、めまぐるしい上に疲れる。
で、脳内があらゆる情報がこんがらかった糸のようにひしめいて、まず今日一番でやるべきことをその中から探し出す作業から始める。
あーぁ、K子に銅版画のニューヨーク風景を見せたら「これがダンボールで出来ていたら面白いよね。」と言われた。
確かに。そりゃー面白そう。
忙しいのにそれを作りたくなってしまう。どんな風に? 構図は? 平面で行くのか? 少し立体にすべきか? ダンボールの種類は何を使う?
あーぁ、やだやだ時間が必要だ。
こんなに追い立てられたような毎日じゃぁいいものは出来ない。
今のところ体が壊れないのが不思議だ、腕組み王女は先週70歳になったのだ。
ラベル:生活