ベッドはカラで「大腿骨骨折」の札がかかっていた。
サダオさんはシャワータイムだった。
こざっぱりした顔で病室に戻って来た。
手術してから4日過ぎた。
しきりに今日が何月何日の何曜日か気にしている。入院して何日目かがはっきりしないらしい。
医者から術後2週間ぐらいで退院出来ると言われたのでその日を待っている。
本人は年は87歳か88歳だと言うが、確か満88歳だ。
早く帰りたい、どんなボロ屋でも自分の家が一番、と言う。
こうなったら入院生活を楽しんだら?と言っても聞く耳はない。
はじめての入院生活で一日の長さに閉口している。
お昼ご飯が来た。サバの味噌煮、蕪と人参の煮物、キュウリの酢の物とご飯。
サダオさんは魚が食べられない。腕組み王女が海苔の佃煮の瓶詰めを持っていったので、それだけでご飯を3口ぐらい食べた。
自分は我がままに生きて来たから、食べ物の好き嫌いも多く、家に帰れば妻のおキクさんに我がままを通させてもらうので、病院生活は辛いのだそうだ。
腕組み王女は何度か入院生活を送ったことがあるけど、それなりに楽しんだけど。
第一食事が出るし、時間がたっぷり有るから本が読めるし、絵も描ける。
でもサダオさんは病院生活は堪え難いようだ。
「置かれた場所で咲きなさい」って言葉も有るでしょう?
歩けるようにリハビリ頑張って、帰って来てもおキクさんを困らせちゃあダメよ。
ラベル:ご近所