暗〜い声で高校時代の同級生のK君からだ。
「ハガキ来た? 高校の担任だったS先生が9月に亡くなって、家族葬をしたと書いてある。」
「えー、先月も展覧会で同級のKT君が来たから、先生を囲んでそろそろクラス会やらないとね。」 と話ししたばかりだ。KT君も仕事しているから忙しそうだし・・・・
先生は確か肺がんだった。
「俺、芝居なんかやっているから忙しくて、同窓会の世話も全然していなくてさ。」と酒でも飲んでいるのか、やけに暗く声が小さい。
自分が主催して同窓会を計画しなかったのが罪悪のような話しっぷりだ。
「お悔やみのハガキかお手紙を出せばいいんじゃないの?」と言っても、お香典を持ってお参りしたいような雰囲気だ。
あんた、学生時代そんなにいい生徒じゃなかったでしょう、と言ってやりたいが。
言わずに「女子に連絡することがあったら手伝う。 何しろ今生きている私たちが元気でいることが大事よ。」と電話を切った。
それなら先生が生きていらっしゃる間になんでもしてあげなければ。
腕組み王女は何時ぞやの先生の難しい江戸時代の言葉のご本の出版祝いの席で、小さい銅版画の作品をプレゼントできたから、彼ほど後ろめたくない。
S先生は一度も腕組み王女の展覧会にはお見えにならなかったが、必ず展覧会の度にご案内すると、「活躍を嬉しく思います。」とお葉書をくださった。
わたしはK君ほど悔やむことはない。
ラベル:恩師