2023年09月10日
武家屋敷はいずこ
腕組み城の前には以前、「ご家老様の家」と呼ばれる屋敷があった。
木の塀の内側に生垣がびっしり植わっていて、中に平屋の家がひっそりありご家老様の末裔なのかおばあさんとばあやさんが住んでいらした。
後ろに何軒かの小さな家作があって、それを借りていた人も引っ越していかれた。
いつの間にかそのおばあさんは老人ホームに入られたと聞いた。
そのうち、遠くの親戚一同が集まって、土地と家を処分して更地にしてしまった。
やがて土地が真ん中に私道のある4軒分の分譲地となって売り出された。
塀や植木に囲まれた広い屋敷だと思っていたが、今風の家が立ってみれば4軒分の土地だったのだ。
以前の面影はない。
今またその隣に並んであった武家屋敷の白壁造りの長塀が取り壊されている。
昔の家とその後ろに蔵があり、さらに大きな昔風の屋敷があった。
以前、町内会でご挨拶に伺った時は、そこにも上品なお婆さんと同じ歳くらいのばあやさんと呼ばれる老人が住んでいらした。
そこもいつか無人となり、何年も過ぎた。
そこを通る時、瓦ののった白壁に腰板のはられた美しい塀だけが昔の雰囲気を残していたが。
それがブルトーザーが入って全部撤去されて、ガラーっとした空き地になった。
駅前に「武家屋敷こちら」の看板があるが、もう武家屋敷はあと1本の通りに1軒あるだけになってしまった。
昔の日本のたたずまいはなんと美しく優雅なものだったのだろう。
たとえ下町の長屋でも日本人はきちんと暮らしていたのだね。
現代の私たちはガサツに生きているね。